高脂血症予防のポイント

高脂血症とは、血液中の脂質(主にコレステロールと中性脂肪)が異常に多い状態をいいます。高脂血症は心臓病(狭心症、心筋梗塞)や脳梗塞などを引き起こす動脈硬化の原因となります。また、更年期以降の女性では、女性ホルモンの減少により、血中コレステロールが増加することが知られており、骨粗髪症とともに、動脈硬化の予防にも気をつけることが必要です。

高脂血症状の予防

高脂血症の予防は食事療法が最も重要になります。
次のことに注意してください。

食べ過ぎは禁物(エネルギーを適正に)

食べ過ぎは、脂肪の過剰摂取を招き肥満の原因となります。1日に摂取するエネルギー(カロリー)を適 正にすることが大切です。

動物性脂肪の摂取をひかえる

動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれ、LDLコレステロールを増やします。これに対し、植物性脂肪や魚類に含まれる不飽和脂肪酸はコレステロールを下げる作用がありますので、植物性脂肪や魚類の油を摂ることが大切です。

コレステロールの多い食品を避ける

コレステロール摂取量は、1日300mg以下が目安です。

食物繊維を多く摂取する

食物繊維は腸管からのコレステロールの吸収を抑え、体外への排泄を促します。1日の必要量は20から25gとされています。

ビタミンを多く摂取する

LDLコレステロールは酸化されると動脈硬化を促進します。ビタミンEやC、カロチンはコレステロールの酸化を防ぎます。

適度な運動

過剰に摂りすぎたエネルギーを消費させるために必要です。

更年期と高脂血症

更年期になると女性のコレステロール値が上昇します。このため、更年期以降の女性では、骨粗鬆症とともに動脈硬化のリスクが上昇します。この原因はエストロゲン(女性ホルモン)の減少により、肝臓のLDL受容体が減少するからです。 LDLコレステロールは肝臓で作られますが、LDL受容体は血中のLDLコレステロールを回収するとともに、それにより血中のLDLコレステロール濃度を感知します。肝臓に回収される LDLコレステロールの量が少なくなるため、肝臓は血中のLDLコレステロールが少なくなったと勘違いして、たくさん作ってしまい、その結果、血中のLDLコレステロールが増加して高脂血症になってしまうわけです。

年齢別の血清総コレステロールの平均値

年齢別の血清総コレステロールの平均値

血中脂質の種類

脂質とは、脂肪類の総称です。血液の中には脂質として、コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、リン脂質、脂肪酸などがあります。この中で、特に動脈硬化と関連するのはコレステロールとトリグリセライドです。これらは脂ですから、このままでは血液に溶けません。そこで、タンパクと結合したリポタンパクとして溶けています。

リポタンパクの種類

コレステロール
●LDLコレステロール

低比重リポタンパク(悪玉コレステロール)

●HDLコレステロール

高比重リポタンパク(善玉コレステロール)

中性脂肪

●カイロミクロン

リポタンパクの構造

リポタンパクの構造

高脂血症と動脈硬化

動脈硬化の進行道程血液中のコレステロール値が高い状態が長く続くと、血管の内側に余分なコレステロールが付着し、動脈硬化がおこります。高脂血症で高血圧症を伴う場合、動脈硬化の進行が助長され、徐々に血管が硬く狭くなり、心臓を養っている冠状動脈がひどい動脈硬化となれば、狭心症や心筋梗塞に、また、脳の血管におこれば、脳梗塞に進展します。動脈硬化の恐いところは、血管の内腔が75%詰まったところで、初めて症状が出ることです。

日本動脈硬化学会のコレステロールに関する診断基準

日本動脈硬化学会のコレステロールに関する診断基準

LDLコレステロール

コレステロールは生活習慣病の要因として悪者扱いをされるケースがありますが、われわれが生きていく上でなくてはならない大切な物質です。 LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれ、動脈硬化の原因として悪者扱いされていますが、これは細胞膜やホルモンなどの原料となるコレステロールを運ぶために必要で、LDLコレステロールが少なすぎれば、ホルモンの合成ができなくなってしまいます。動脈硬化の原因となるものは、LDLコレステロールが酸化した「酸化型LDLコレステロール」です。血中LDLコレステロールの値が高いと、酸化されるLDLコレステロールも多くなるため、動脈硬化のリスクが高まるということです。

悪者は酸化型LDL

悪者は酸化型LDL